人がやらなくていい仕事、まだ多すぎませんか|フィリピン拠点の業務を棚卸しする5つの質問

AI導入がうまくいくかどうかは、ツール選びの前に決まっています。フィリピン拠点の業務を棚卸しし、人の手から外す作業を見極める5つの質問と、現地拠点ならではの注意点を解説します。

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運営者・AIエンジニア / IT歴36年以上・マニラ在住13年以上

人がやらなくていい仕事、まだ多すぎませんか|フィリピン拠点の業務を棚卸しする5つの質問

AI導入の相談で、最初に聞かれるのは「どのツールがいいですか」です。ですが実際にうまくいくかどうかは、その前の段階でほぼ決まっています。

どの作業を人の手から外すのかが決まっていない状態でツールを選ぶと、便利そうなものを入れて、誰も使わないまま終わります。

この記事では、フィリピン拠点の業務を棚卸しするための5つの質問を紹介します。ツールの話は出てきません。紙とペンがあれば今日できる作業です。

棚卸しをしないまま進めると何が起きるか

現場でよく見るのは、次のような流れです。

経営層が「AIで効率化を」と言い、担当者が製品を比較し、良さそうなものを契約します。ところが導入してみると、実際に減らしたかった作業には合っていません。担当者は使い道を探し始め、そのうち触らなくなります。

原因は、選んだツールではありません。どの作業を減らしたいのかを、誰も具体的に言えていなかったことにあります。「業務を効率化したい」は目標であって、対象ではありません。

棚卸しは、この対象を決めるための作業です。手間としては半日程度で、効果としてはいちばん大きいところです。

業務を棚卸しする5つの質問

現地拠点で発生している作業をひとつずつ取り上げ、次の5つを順に当ててください。

関連: AI導入でよくある失敗と回避方法|フィリピンの日系企業がつまずく5つのパターン で詳しく解説しています。

質問1:その作業は、判断を含んでいますか

含んでいなければ、人がやらなくてよい候補です。

「受け取ったメールを種類ごとにフォルダに分ける」「請求書の番号を台帳に転記する」といった作業には、判断がほとんどありません。一方、「クレームの内容を読んで、返金するかどうか決める」には判断が入ります。

判断が入る作業も、下ごしらえの部分だけを外せることがあります。クレームの例なら、要点の整理と過去の類似事例の抽出はAIに任せ、返金の可否は人が決める、という分け方です。

関連: なぜ今フィリピン拠点の日本企業がAIに注目するのか|人手不足を解決する始め方 で詳しく解説しています。

質問2:やり方が、毎回同じですか

同じであれば候補です。毎回違う場合は、その「違い」を決めているものが何かを先に書き出してください。

たとえば「見積書の作成」は、一見毎回違うように見えます。ですが実際には、単価表を見て数量をかけ、条件を追記しているだけ、ということがあります。この場合、違っているのは中身であって手順ではありません。手順が同じなら候補に入ります。

関連: リーンAIで進める業務変革 — フィリピン進出日本企業のためのムダ削減とAI導入術 で詳しく解説しています。

質問3:間違えたら、すぐ気づけますか

すぐ気づける作業ほど、安心して任せられます。

翻訳した文章はその場で読めば分かります。一方、在庫データの更新のように、間違いが数週間後に発覚する作業は、任せる前に確認の仕組みが必要です。

これは「任せてはいけない」という意味ではありません。気づける仕組みをセットで作るかどうかの分かれ目だ、ということです。

質問4:その作業は、誰かの待ち時間を作っていますか

作っているなら、優先度が上がります。

たとえば、日本本社への報告資料を作るのに担当者が半日かかっているとします。減るのは半日ですが、その半日のあいだ本社の判断が止まっているのなら、効果は半日分では済みません。

作業時間だけを見ると小さく見えても、実際の効果は大きくなります。この種の作業を見つけられるかどうかが、棚卸しの腕の見せどころです。

質問5:担当者は、その作業を好きでやっていますか

これは冗談ではなく、実務的に重要な質問です。

その作業に誇りを持っている人から取り上げると、反発が起きます。逆に「これさえなければ」と思われている作業は、外した瞬間に感謝されます。同じ工数削減でも、現場の受け止め方はまったく違います。

最初の1件は、必ず後者から選んでください。

5つの質問を通した後にやること

質問を当て終わったら、作業を3つの山に分けます。

すぐ外せる山は、判断がなく、手順が同じで、間違いにすぐ気づけて、担当者も手放したがっている作業です。ここから始めます。

条件つきの山は、候補ではあるものの、確認の仕組みが必要なものです。すぐ外せる山で経験を積んでから着手します。

外さない山は、判断が中心の作業と、担当者の専門性そのものである作業です。ここに手を出すと、現場との関係が悪くなるだけで効果も出ません。

分けたら、すぐ外せる山の中からいちばん時間を食っているものを1つだけ選んでください。2つ選ばないことが大切です。

現地拠点ならではの注意点

フィリピンの拠点で棚卸しをするときは、日本と同じ感覚で進めないほうがうまくいきます。

まず、作業が人に紐づいていることが多い点です。 「この処理はあの人しか知らない」という状態は、日本でもありますが、現地拠点ではより起きやすくなります。棚卸しの過程で属人化が見つかったら、それ自体が収穫です。AI化の前に、手順を書き出すだけでも価値があります。

次に、言語が混ざる点です。 社内の記録が英語、現場のやりとりがタガログ語、本社への報告が日本語というように、1つの作業の中で言語が切り替わることがあります。この切り替えは人にとって負担ですが、AIが比較的得意とするところでもあります。棚卸しのときは、言語の切り替えが起きている箇所に印をつけておいてください。

最後に、現地スタッフに直接聞く点です。 管理職の認識と、実際に手を動かしている人の認識はずれます。「その作業、1日どれくらいかかりますか」と本人に聞くのがいちばん正確です。

よくある質問

Q: 棚卸しにはどれくらい時間がかかりますか?

A: 1つの部署であれば半日程度です。全部署を一度にやろうとすると止まりますので、まずは作業量が多いと感じている部署を1つ選んでください。

Q: 5つの質問すべてに当てはまらないと、外せませんか?

A: そうではありません。質問1と質問2に当てはまれば候補です。質問3から5は、優先順位と進め方を決めるためのものです。

Q: 現場が「取られる」と感じないか心配です。

A: だからこそ質問5があります。担当者が手放したがっている作業から始めれば、この心配はほとんど起きません。逆に、本人が価値を感じている作業から手をつけると、どれだけ丁寧に説明しても抵抗が残ります。

Q: 棚卸しの結果、AI化する必要がない作業ばかりでした。

A: それは失敗ではなく、正しい結論です。作業をやめる、頻度を下げる、テンプレートを用意するといった対応で足りることもあります。AIを使わずに解決できるなら、そのほうが安上がりで壊れにくい仕組みになります。

まとめ

AI導入の成否は、ツールの選定ではなく、対象の選定で決まります。判断が入るか、手順が同じか、間違いにすぐ気づけるか、誰かの待ち時間を作っているか、担当者が手放したがっているか——この5つを当てるだけで、対象はかなり絞り込めます。

そのうえで、すぐ外せる作業の中から1つだけ選んでください。2つ選んだ時点で、進みが遅くなります。

PH AI Worksでは、在比日系企業や現地の事業者向けに、この棚卸しからご一緒しています。ツールの相談の前に、まずは「減らしたい作業を1つ書き出す」ところからお声がけください。

この記事を書いた人

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運営者 / AIエンジニア(IT歴36年以上)

  • 東京都出身・マニラ在住13年以上
  • IT歴36年以上(開発・SEO・AI)
  • IBM認定 生成AIエンジニア
  • AIチャットボット・RAG・AIエージェント開発

IT歴36年以上、マニラでの実務経験13年以上の日本人AIエンジニア(運営者)です。AIチャットボットや業務自動化、AIエージェント、生成AIマーケティングなど、フィリピンの日系企業が「成果に直結するAI」を導入できるよう、現場目線で記事を書いています。ご相談は日本語・英語どちらでも対応します。

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