フィリピンSEOがうまくいかない理由|多言語対応とAI活用で検索流入を作る
フィリピンでSEOの成果が伸びないのは、タグリッシュ検索とモバイル環境への対応不足が原因です。AIで多言語コンテンツを作成し、人が確認する実務手順をフィリピンの日系企業向けに解説します。

フィリピンに拠点を持つ日系企業から、「英語のサイトを用意したのに、検索から問い合わせが来ない」という相談をよく受けます。サイトを拝見すると、確かに構成は整っており、英語の文章も正確です。それでも検索流入が伸びない理由は、たいてい1つに絞られます。フィリピンの検索者が実際に使用している言葉と、サイトの言葉がずれているのです。
私はマニラで13年以上、AI導入とWeb制作を支援してきました。2000年代の日本ではSEOとアフィリエイト事業を運営し、検索順位の変化を日々追う仕事をしていました。この記事では、フィリピン向けSEOがうまくいかない理由と、AIを使用して現実的に対応する手順を、実務の流れに沿って説明します。
要約
- フィリピンの検索者は英語とタガログ語(フィリピノ語)を混ぜた「タグリッシュ」で検索することが多く、英語だけのサイトでは検索語とずれが生じます。
- 検索のほとんどがスマートフォン経由のため、表示速度が遅いサイトは検索でも売上でも不利になります。
- 機械翻訳だけに頼らず、AIで下書きを作って人が確認する二段構えにすると、多言語対応の作業時間を大きく減らせます。
フィリピン向けサイトを用意したのに、検索からの訪問がない
| 状況 | 実際に起きていること |
|---|---|
| 英語サイトを公開した | タグリッシュで検索する人の検索語と、サイトの語句が一致していない |
| 表示に時間がかかる | 読み込み中に離脱され、検索順位にも影響する |
| 日本向けの構成をそのまま使用した | フィリピンの検索意図と合っていない |
英語は多くの人に通じますが、実際の検索窓に入力される言葉は英語だけではありません。「食事 デリバリー マニラ 安い」のように、英語とタガログ語が混ざった言葉で検索する人が珍しくないのです。サイトの文章が正しい英語であっても、検索者が入力する語句と一致しなければ、検索結果に表示される機会そのものが減ります。
もう1つの壁は表示速度です。フィリピンでは建物や地域によって回線速度の差が大きく、画像の重いページは表示に時間がかかります。訪問者は表示を待たずに前の画面に戻ってしまうことが多く、この離脱が検索順位にもマイナスに働きます。
関連: フィリピンでAIを仕事に使うには?中小企業・日系企業が最初に始める3つのこと で詳しく解説しています。
原因は、日本向けの前提をそのまま持ち込んでいること
| 前提 | フィリピンとのずれ |
|---|---|
| 「英語で書けば伝わる」 | 検索語はタグリッシュが中心 |
| 「翻訳すれば現地向けになる」 | 商習慣や制度の違いが反映されない |
| 「日本のSEOテンプレートが通用する」 | 検索意図・競合環境が異なる |
Ethnologueの調査によると、フィリピンには184の言語があります。公用語であるフィリピノ語(標準タガログ語)と英語のほかに、多くの地域言語が日常的に使われているのです。全国的にはフィリピノ語の運用力を持つ人が多数派で、英語の運用力を持つ人はその半分程度にとどまるとされています。つまり英語は「通じる」言語であっても、検索者が最初に思いつく言葉として選ばれるとは限りません。
調査会社DataReportalの2026年版レポートによると、2025年末時点でフィリピンのインターネット利用者は約9,800万人です。これは人口の83.8%にあたります。インターネット利用者のスマートフォン所有率は98.6%で、フィリピンはモバイルが検索の主な入口になっている市場です。パソコン向けに作られたサイトをスマートフォンでそのまま開くと、表示の遅さが離脱に直結します。
汎用の翻訳ツールや日本向けのSEOテンプレートをそのまま持ち込んでも、この2つのずれは埋まりません。現地の検索語と表示環境に合わせて作り直すことが、遠回りに見えて一番早い方法です。
AIを使用して多言語対応とSEOを進める全体像
| フェーズ | 主な作業 |
|---|---|
| 調査 | 現地の検索語調査、競合の表示速度チェック |
| 制作 | AIで多言語の下書き作成、人による文化面の確認 |
| 運用 | 検索順位の定期チェック、表示速度の改善 |
進め方は大きく3段階に分かれます。まず現地でどんな言葉が検索されているかを調べましょう。次に、AIで多言語の下書きを作り、それを人が確認して公開します。公開後は、検索順位と表示速度を定期的に見直しましょう。ここで重要なのは、AIが翻訳した文章をいったん下書きとして保存し、人が確認してから公開することです。
私はIBM認定の生成AIデジタルマーケティング・プロフェッショナル資格の取得を通じて、GEOを学びました。GEO(生成エンジン最適化)とは、ChatGPTなどのAI検索に引用されるための対策のことです。SEOに加えてGEOを意識したコンテンツを発信すると、AIの回答に引用されやすくなります。フィリピンでも、若い世代が検索エンジンだけでなくAIチャットに直接質問する場面が増えています。
関連: フィリピンでのIT開発の進め方|在比日系企業が失敗しない選び方 で詳しく解説しています。
手順の詳細
| 手順 | 作業内容 |
|---|---|
| 1. 検索語調査 | タグリッシュを含めた現地の検索語を洗い出す |
| 2. AIで下書き作成 | 多言語コンテンツの初稿をAIで作る |
| 3. 人による確認 | 文化や商習慣、数字の正確さを人が確認する |
| 4. 決済・表示の調整 | ペソ表記、現地決済、表示速度を整える |
手順1: タグリッシュを含めた検索語を洗い出します。英語だけでなく、現地でよく使われる言い回しを含めて検索語の候補を集めましょう。地域によってはビサヤ語(セブアノ語)が優先される場合もあるため、対象地域を先に決めておくと調査の的が絞れます。
手順2: AIで多言語の下書きを作ります。生成AIを使うと、英語・タガログ語の下書きを短時間で作れます。私の実務では、ChatGPT Plusで下書きを作り、Claude Proで論理構成を確認する二段階で進めています。この順序にしてから、下書き作成にかかる時間が大幅に短縮できました。
手順3: 文化や商習慣、数字を人が確認します。AIの出力をそのまま公開すると、フィリピン特有の制度(たとえば民間の医療保険制度であるHMO)を日本の健康保険と同じもののように記述してしまう事故が起きます。2000年代にSEO・アフィリエイト事業を運営していたころ、「数字を鵜呑みにせず、前月との比較や参照元を確認する」習慣が身につきました。この習慣は、AI時代の確認作業でもそのまま役立っています。
手順4: 決済と表示速度を整えます。フィリピンではGCashやMayaといったスマホ決済が広く使われており、クレジットカード前提の決済画面では途中離脱が目立ちます。価格はペソ表記を基本にし、画像を軽くして表示速度を改善しましょう。
実例として、マカティにある日系飲食店のAI導入を支援したことがあります。サイトを作り直し、SEO・GEO対策とAIチャットボット、メニュー更新の仕組みを整えたところ、狙った検索語での上位表示を維持でき、来客につながりました。別の案件では、フィリピン人が経営する携帯ショップのMessenger対応を、タガログ語と英語、日本語の3言語で自動返信できるようにしています。多言語対応は記事の翻訳だけでなく、問い合わせ対応まで含めて考えると効果的です。
関連: フィリピン外注の常識が変わる|AI再教育1万人発表と日系企業の対応 で詳しく解説しています。
フィリピンSEO・多言語対応でよくある失敗例
| 失敗例 | 対策 |
|---|---|
| 機械翻訳だけで公開する | AIの下書きを人が確認する工程を必ず入れる |
| 日本のテンプレートを流用する | 現地の検索語・競合を調べ直す |
| 決済・表示速度を後回しにする | 制作の初期段階から組み込む |
| 検索順位だけを見る | 表示速度・離脱率もあわせて確認する |
| 一度作って放置する | 公開後も月次で数字を確認する |
失敗例:機械翻訳だけで多言語ページを公開する。文脈や商習慣が反映されず、不自然な表現のまま公開されてしまいます。AIの下書きのあとに、必ず人が確認しましょう。
失敗例:日本で効果のあったSEOテンプレートをそのまま流用する。検索意図も競合環境も違うため、狙った検索語で順位が上がりません。現地の検索語調査からやり直す必要があります。
失敗例:決済手段や表示速度を後回しにする。サイトの完成後に修正しようとすると、構成から再検討が必要になることが多く、余分な時間がかかります。制作の初期段階で組み込んでおきましょう。
失敗例:検索順位の変化だけを見て満足する。順位が上がっても表示速度が遅く離脱率が高いままでは、問い合わせにはつながりません。順位と合わせて表示速度や離脱率も確認します。
失敗例:サイトを公開したあと、数字を確認せずに放置する。検索環境は変わり続けるため、月に一度は検索順位と流入経路を確認し、必要なら修正しましょう。フィリピンでAIを業務に取り入れる全体の流れと、最初に始める3つのことは、記事「フィリピンでAIを仕事に使うには?中小企業・日系企業が最初に始める3つのこと」で説明しています。
よくある質問
Q: フィリピン向けサイトは英語だけで十分ですか。
A: 英語だけでも最低限の接点は作れます。ただし商品によっては、タガログ語や現地の言い回しを混ぜたほうがクリック率が上がります。特に食品や日用品のような消費者向け商材では、タグリッシュを意識した言葉づかいが効果的です。
Q: 機械翻訳と生成AIの翻訳はどちらを使うべきですか。
A: 用途によって使い分けます。定型的な文書は機械翻訳で十分なことが多く、マーケティング向けの文章や商習慣を含む内容は、生成AIで下書きを作ってから現地の感覚で確認する進め方が向いています。
Q: 日本で効果のあったSEOの考え方はそのまま使えますか。
A: 考え方の骨組みは応用できますが、検索語や競合、検索意図は現地であらためて調べ直す必要があります。日本で上位に出ていた構成をそのまま持ち込んでも、フィリピンの検索者が使う言葉が違うため順位は上がりません。
Q: 多言語対応で見落とされがちな点は何ですか。
A: 価格表示と決済手段です。フィリピンではGCashやMayaといったスマホ決済が広く使われているため、クレジットカード前提の決済画面のままだと途中離脱が増えます。価格もペソ表記を基本にする必要があります。
Q: 社内にSEOやAIに詳しい人がいなくても進められますか。
A: 進められます。検索語調査や下書き作成はAIツールを使えば時間を短縮できます。ただし文化面や事実の確認は人の目が必要なので、その工程だけは省かないようにしてください。
まとめ
フィリピンでSEOが伸び悩む理由の多くは、英語だけを前提にした作りと、モバイル環境への対応不足にあります。必要な作業は4つです。タグリッシュを含めた検索語調査、AIによる多言語の下書き作成、人による文化や数字の確認、そして決済と表示速度の調整です。これを1つの流れとして設計すると、検索流入から問い合わせまでがつながりやすくなります。
まずは、自社サイトの検索語が現地の言葉と合っているかを見直してみてください。どこから着手すべきか判断できない場合は、PH AI Worksの無料相談で状況を整理することもできます。導入を決めていない段階での相談でも構いません。
参考・出典
- Ethnologue「Philippines」(フィリピン国内の言語数・言語運用力に関するデータを公表): https://www.ethnologue.com/country/PH/
- DataReportal「Digital 2026: The Philippines」(2025年末時点のインターネット利用者数・スマートフォン所有率を公表): https://datareportal.com/reports/digital-2026-philippines
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