フィリピンで起業する日本人が知っておくべきIT事情と対策
フィリピンで起業する日本人向けに、現地のITインフラ事情とAI・テクノロジー活用の前提となる回線二重化やクラウド導入のコツを、12年の現地経験から解説します。

フィリピンで会社を立ち上げようと考えているとき、現地のIT環境がどうなっているか不安になることはありませんか。日本と同じ感覚で準備を進めると、回線速度や停電、システム選びで思わぬ落とし穴にはまることがあります。
この記事では、フィリピンで起業する日本人が最初に知っておくべきIT事情を、現地の実情に沿ってわかりやすくまとめます。読み終わるころには、開業前にやるべきIT準備の優先順位がはっきり見えてきます。
要約
- フィリピンのITインフラは「止まる前提」で設計することが起業準備の出発点になります
- インターネット回線の二重化、UPSの常備、クラウド中心の業務システムが3つの最重要対策です
- 契約書の英文レビューと、現地スタッフのITリテラシー教育を軽視するとトラブルが長期化します
日本と同じ感覚で進めると業務が止まる
| 想定していた状況 | 実際に起きること |
|---|---|
| ネットは常時つながる | 数分〜数時間の通信障害が定期発生 |
| 停電は数年に一度 | 月に複数回、予告なく停電 |
| クラウド会議は途切れない | 雨天や夜間に頻繁に音声切れ |
フィリピンに進出した日本企業から、「ネットがつながらず会議が中断した」「停電でサーバーが落ちた」という声をよく聞きます。日本では当たり前に動くインフラが、フィリピンでは安定して動かないことがあるのです。
現地では停電や通信障害が日常的に発生するため、業務が止まる前提での備えが欠かせません
私自身、マカティのコンドミニアムに12年以上住んでいますが、停電やエレベーターの故障が前触れなく起きる現実を何度も経験してきました。「インフラは安定している」という前提を捨てて、代替手段を常に用意しておくことが当たり前になっています。
特に困るのが、クラウド会計や勤怠管理、Web会議などネット接続を前提にしたサービスが止まってしまう状況です。業務が完全にストップし、現地スタッフも顧客も待たせてしまいます。
関連: フィリピンでAI自動化を成功させる5つのポイント|現地12年のエンジニアが解説 で詳しく解説しています。
インフラと商習慣の違いが原因
| 違いのポイント | 日本 | フィリピン |
|---|---|---|
| 回線安定性 | 高い | 地域差・天候差が大きい |
| 契約スピード | 数日〜1週間 | 数週間〜1ヶ月 |
| サポート言語 | 日本語 | 英語のみ |
| 請求書 | デジタル中心 | 紙ベースが残る |
フィリピンのインターネット回線は近年改善されてきましたが、地域差が大きく、停電や通信障害も日常的に発生します。マニラ首都圏でも雨季には通信が不安定になることが珍しくありません。
加えて、フィリピンのIT商習慣は日本と違います。契約手続きが遅い、サポート対応が英語のみ、請求書が紙ベースといった違いに戸惑う日本人起業家は多いです。日本の業者と同じスピード感を期待すると、開業スケジュール全体が遅れます。
開業前にIT環境を二重化して整える
| 対策 | 目的 | 優先度 |
|---|---|---|
| 回線2社契約 | 通信障害時の業務継続 | 高 |
| UPS+モバイル回線 | 停電時のサーバー保護 | 高 |
| クラウド型業務システム | 場所を問わない作業継続 | 高 |
解決策は、「止まらない前提」ではなく「止まる前提」で設計することです。具体的には次の3つを最初に押さえます。
回線の二重化とUPSの常備が、フィリピン起業時のIT基盤づくりの土台になります
- インターネット回線を2社以上から契約してバックアップを持つ
- UPS(無停電電源装置)とポケットWi-Fiを必ず常備する
- 業務システムはクラウド型を中心にして、停電時もモバイルで継続できるようにする
私の作業環境でも、メイン回線のSky Fiberが25Mbpsしか出ない時間帯があるため、大きなデータは夜間にまとめて送信するようにしています。Globeのテザリングを予備回線として常に立ち上げておくことで、メイン回線が落ちた瞬間でも仕事が止まらない体制にしています。
この3点を整えるだけで、現地のIT事情に振り回されにくい体制ができます。
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開業準備の具体的な進め方
| 工程 | 推奨サービス例 |
|---|---|
| メイン回線 | PLDT、Globe(光) |
| サブ回線 | Converge、Sky、法人LTEルーター |
| グループウェア | Google Workspace、Slack、Zoom |
| 会計 | フィリピン現地BIR対応のクラウド会計 |
まずメイン回線は、PLDTかGlobeといった大手ISPから光回線を契約します。オフィスエリアによって対応事業者が異なるので、入居前に必ず確認しておきます。
次にサブ回線として、ConvergeやSkyの別系統、もしくは法人向けLTEルーターを契約します。メイン回線が落ちた瞬間に切り替えられるよう、ルーターを2台並べておくのが現実的です。
業務システムはGoogle Workspace、freee、Slack、Zoomなど、クラウドベースで動くサービスをまとめて導入します。ローカルサーバーを置くと停電時に全社員の作業が止まるため、できるだけサーバーレスで構築するのが安心です。
会計や請求はフィリピン現地の税制(BIR)対応のクラウド会計を選びます。日本の会計ソフトは現地申告に対応していないため、現地基準のシステムが必須です。
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サポート体制と契約書を軽視しない
| よくある失敗 | 起きやすい結果 |
|---|---|
| 価格優先でISPを選ぶ | 障害時の英語対応で長時間停止 |
| 英文契約書を読み飛ばす | 解約時に高額違約金 |
| 現地スタッフ任せにする | セキュリティ事故・情報漏洩 |
よくある失敗は、「安いから」という理由だけでISPやSaaSを選ぶことです。トラブル時にサポートが英語のみだったり、対応が翌週まで来なかったりして、業務が長く止まります。
英文契約書の解約条件と違約金は、署名前に必ず精査することがトラブル回避の鍵です
もう一つの落とし穴は、契約書の言語と内容を確認しないことです。フィリピンの契約は英語が基本で、解約条件や違約金が日本より厳しい場合があります。私がフィリピンでビジネスを始めた頃にとくに注意したのは「履行条件」と「解約時の取り扱い」の2点で、解約手続きが日本より複雑なため、ここをあいまいにすると後で不利な立場に追い込まれやすいと痛感しました。
また、現地スタッフのITリテラシーにも幅があります。日本では当たり前のセキュリティ意識(パスワード管理、フィッシング対策など)を一から教える前提で、社内研修を準備しておきましょう。
FAQ: よく来る質問
Q: フィリピンのインターネットは本当に遅いのですか
A: 都市部の光回線であれば100Mbps以上は出ます。ただし安定性は日本より低く、夜間や雨天時に速度が落ちることがあります。
Q: 日本のクラウドサービスはそのまま使えますか
A: Google WorkspaceやSlackなどグローバル系は問題なく使えます。一方で、日本国内向けの会計・人事ソフトは現地の税務や労務に対応していないことが多いです。
Q: サーバーは現地に置くべきですか、日本に置くべきですか
A: 基本はクラウド(AWS東京リージョンやGCP)を推奨します。物理サーバーは停電と気温管理の負担が大きく、初期投資に見合わないことが多いです。
Q: ITトラブル対応は誰に頼めばよいですか
A: 現地の日系ITサポート会社か、日本語対応のあるITコンサルタントに月額契約しておくのが安心です。英語だけでの交渉は技術用語が多く難しくなります。
まとめ
| 開業前に必ず押さえる項目 |
|---|
| 回線の二重化(メイン+サブ) |
| UPSとモバイル回線の常備 |
| クラウド中心の業務システム |
| 英文契約書の精査 |
| 現地スタッフへのITリテラシー教育 |
フィリピンで起業するなら、「止まる前提」のIT設計が必須です。回線の二重化、UPSの常備、クラウド中心の業務システム、この3つを最初から準備しておけば、開業後のトラブルは大きく減らせます。
次のアクションとして、まずは入居予定オフィスのISP対応状況を確認し、メインとサブの回線候補をリストアップしてみてください。早い段階でIT基盤を整えておくことが、フィリピンでの事業を軌道に乗せる近道です。
参考・出典
- PLDT公式サイト: https://pldthome.com/
- Globe Telecom公式サイト: https://www.globe.com.ph/
- フィリピン内国歳入庁(BIR): https://www.bir.gov.ph/

