AIエージェントが規程づくりを担う時代に、人が残る仕事は何か|フィリピン日系企業向けケーススタディ

LogicGateとAnthropicの技術を用いるOdeの提携は、規程やリスク管理という文書と手順の領域にAIエージェントが入り始めたことを示します。下書きはAI・判断は人・更新のきっかけを先に決めるという分担を、フィリピンの日系企業向けに読み解く無料ケーススタディ教材です。

執筆者
執筆者執筆者

運営者・AIエンジニア / IT歴36年以上・マニラ在住13年以上

AIエージェントが規程づくりを担う時代に、人が残る仕事は何か|フィリピン日系企業向けケーススタディ

AIエージェントが規程づくりを担う時代に、人が残る仕事は何か|フィリピン日系企業向けケーススタディ

社内規程、手順書、コンプライアンスの体制づくり——重要だと分かっていながら、後回しになり続ける仕事があります。ここにAIエージェントを入れる動きが、企業向けの領域で本格化してきました。この教材では、コンプライアンス関連のシステムを手がける企業とAI専業ベンダーの提携を題材に、規程や手順の整備をAIに任せられる範囲と、人が最後まで持つべき部分を、フィリピンの日系企業の状況に当てはめて考えます。

報道によると、2026年7月27日、コンプライアンス関連のシステムを提供するLogicGateと、Anthropicの技術を用いる企業向けAI導入会社であるOdeが提携を発表しました。目的は、LogicGateの顧客がGRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)の体制を構築し、実際に運用し、更新していく作業を加速することだとされています。Odeは2026年に、AnthropicとBlackstone、Hellman & Friedman、および複数の投資家が参画する形で立ち上げられた企業向けAI変革会社だと報じられています。つまり、規程やリスク管理という「文書と手順の世界」に、AIエージェントが本格的に入り始めたということです。本教材では、この動きをPart 1〜4の順に、自社の状況へ当てはめて考えていきます。


Part 1: 読む → 自社への示唆を考える

Step 1: Pre-Reading(3分)

読む前に、自社に置き換えて考えてみましょう。

  • 自社の社内規程や手順書は、最後にいつ更新されましたか。
  • 「作ったが誰も読んでいない」規程は、どれくらいありますか。
  • 規程の整備が後回しになる理由は、時間ですか、それとも書き方が分からないからですか。

Step 2: First Reading(10分)

以下は、ニュースの事実をもとに、フィリピン日系企業を主語として書き起こした架空の社内メモです。


社内向けメモ:規程・手順の整備にAIを使えるか

コンプライアンス関連システムのLogicGateと、Anthropicの技術を用いるOdeが提携したと報じられました。狙いは、顧客企業がGRCの体制を作り、実際に運用し、更新していく作業を速めることだとされています。

第一に注目したいのは、対象が「作る」だけでなく「運用する」「更新する」まで含まれている点です。規程づくりで当社がつまずいているのは、最初に作る段階よりも、作った後に更新されず古くなっていく段階です。ここに手が入るなら、意味のある変化になります。

第二に、この領域が文書と手順の世界である点です。規程、チェックリスト、リスクの一覧——いずれも文章と構造でできています。AIが比較的力を発揮しやすい形であり、当社でも同じ発想が使えるはずです。

第三に、大手向けの仕組みがそのまま当社に降りてくるわけではない点です。報じられているのは企業向けの大規模な取り組みで、当社の規模では同じ製品を導入する話にはなりません。ただし考え方は借りられます。「AIが下書きし、人が判断し、更新のきっかけを決めておく」という形です。

当社への示唆は次の3点です。①後回しになっている規程を洗い出し、AIに下書きを作らせます。②内容の判断と承認は必ず人が行う体制にします。③更新のきっかけを事前に決め、古くならない形にします。


出典: Ode with Anthropic and LogicGate Announce Partnership to Scale Expert-Led Client Outcomes through Accelerated Agentic Capabilities(2026年7月27日)

注記: 上記のビジネスシナリオは、公開されている報道をもとに学習目的で作成した架空の社内メモです。提携の内容は今後変わり得るため、最新の詳細は上記リンクの一次情報をご確認ください。

Step 3: Comprehension Check(5分)

  • 提携の目的として挙げられているのは、GRCの体制について何をすることですか。
  • Odeはどのような会社だと報じられていますか。
  • この動きが示しているのは、AIエージェントがどの領域に入り始めたということですか。

Step 4: 3分ブリーフィング(10分)

このニュースを経営会議向けに3分で説明する練習をしましょう。「何が起きたか(規程・リスク管理の領域にAIエージェントが入り始めた)→なぜ重要か(当社が後回しにしている領域と一致する)→当社は何をすべきか(下書きはAI、判断は人、更新のきっかけを決める)」の順で話すと伝わりやすくなります。

Part 2: 重要キーワード解説(経営者向け)

GRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス) — 会社の統治、リスク管理、法令等の遵守をまとめて指す言葉です。日本語では「社内の決まりごとと、その守られ方を管理する仕組み」と考えると分かりやすくなります。

規程の運用 — 作った規程が実際に使われている状態のことです。文書が存在することと、運用されていることは別で、多くの会社でつまずくのは後者です。

AIエージェント — 指示を受けて複数の手順を自分で進めるAIのことです。文章を1回書くだけでなく、資料を集めて整理し、下書きを作るところまで通して行う点が、従来の使い方との違いになります。

更新のきっかけ — 規程や手順を見直す合図をあらかじめ決めておくことです。「法改正があったとき」「同じ問題が2回起きたとき」といった形で決めておくと、古い規程が放置されにくくなります。

Part 3: 自社への応用を考える

後回しになっている文書を洗い出す

まず、自社で「作らなければと思いながら手が付いていない文書」を書き出してください。就業に関する決まり、情報の取り扱いのルール、業務の手順書、外注先との取り決め——おそらく複数出てきます。AIに任せる話の前に、対象を明確にすることが先です。

下書きはAI、判断は人と決める

規程の文章は、AIに下書きさせるのに適しています。一方で、内容の妥当性、自社の実情との整合、そして法令に関わる判断は、人が確認しなければなりません。フィリピンで事業をしている場合は、現地の労働慣行や関連する法令に照らした確認が必要で、ここは専門家に相談すべき領域です。「AIが速く形にし、人が正しさを担保する」という分担を、最初に文書化しておくことをおすすめします。

更新のきっかけを先に決める

規程が古くなるのは、更新する人が決まっていないからです。年に1回の見直し月を決める、法改正の報道を見たときに確認する、同じ問題が2回起きたら該当箇所を直す——このいずれかを決めておけば、放置は防げます。AIを使うと更新の作業自体が軽くなるため、この習慣は以前より現実的になっています。

Part 4: よくある失敗パターン(NG集)

失敗1: AIが作った規程をそのまま採用する

見た目が整っているため、内容を確認せずに採用してしまう例です。AIは一般的な体裁を整えるのが得意ですが、自社の実情や現地の法令に合っているかは判断できません。整った文書ほど、確認を省きたくなる点に注意してください。

失敗2: 現地の事情を反映しないまま日本の規程を訳す

日本本社の規程をそのまま翻訳して使うと、現地の労働慣行や手続きと合わない箇所が出ます。翻訳は出発点であって完成品ではありません。現地の実務に照らした修正が必ず必要になります。

失敗3: 文書を作って終わりにする

規程が存在することと、社員が知っていることは別です。作った後に周知する場と、参照できる置き場所を決めていないと、作業そのものが無駄になります。作る前に「どこに置き、いつ伝えるか」を決めてください。

失敗4: 全部を一度に整えようとする

対象を広げすぎて、途中で力尽きるパターンです。件数の多い問題や、実際に困った経験のある領域から1つ選んでください。1つ完成させると、社内の理解も進み、次に進みやすくなります。

活用のコツ(3 Tips)

  1. 「困った経験のある領域」から始める。 過去に実際にトラブルが起きた分野の規程は、社内の合意も得やすく、効果も実感されます。理想から始めず、痛みから始めてください。
  2. AIには「自社の事情」を必ず渡す。 従業員数、拠点、業種、現地の慣行——前提を渡さずに書かせると、一般的で使えない文書が出てきます。前提の説明に時間をかけるほうが、結果は良くなります。
  3. 確認する人を先に決める。 「誰が読んで承認するか」を決めずに下書きを作ると、確認されないまま放置されます。作り始める前に、確認役を決めておいてください。

ボーナス: PH AI Works 無料相談の活用法

PH AI Worksでは、フィリピンの日系企業向けに、社内規程や業務手順の整備をAIで進める際の設計から、確認体制のつくり方、既存の業務の流れへの組み込みまでを日本語で支援しています。「作らなければと思いながら手が付いていない文書がある」という方は、無料相談をお気軽にご利用ください。現状の簡易診断から一緒に始められます。

参考・出典

この記事を書いた人

執筆者
執筆者

運営者 / AIエンジニア(IT歴36年以上)

  • 東京都出身・マニラ在住13年以上
  • IT歴36年以上(開発・SEO・AI)
  • IBM認定 生成AIエンジニア
  • AIチャットボット・RAG・AIエージェント開発

IT歴36年以上、マニラでの実務経験13年以上の日本人AIエンジニア(運営者)です。AIチャットボットや業務自動化、AIエージェント、生成AIマーケティングなど、フィリピンの日系企業が「成果に直結するAI」を導入できるよう、現場目線で記事を書いています。ご相談は日本語・英語どちらでも対応します。

AI導入の無料相談

御社の課題をお聞きし、最適なAI導入プランをご提案します。

無料相談を予約する(0円・30分)