第3回|取引先に「なぜそうしたか」を説明できるようにする
AIを業務に使っていると必ず聞かれます。「これはAIが作ったのか」「間違っていたら誰の責任か」。答えはあるのに後から作ったように聞こえてしまう、という問題を扱います。あわせて、7月28日に正式版が出たMCP仕様の要点を、経営判断に必要な範囲で整理しました。2026年7月収録。
会員向けの月刊実践レポート、第3回をお届けしました。この記事では、収録した内容のうち時期を問わず通用する部分を全文公開しています。実務への落とし込みと資料(PDF)は会員限定です。
要約
- 第3回のテーマは、AIの使い方を外から問われたときに答えられるかどうかです。第1回の権限の線引き、第2回の出力の確かめ方の先にあたります。
- 困るのは答えが無いからではありません。答えはあるのに、後から作ったように聞こえてしまうからです。
- 事前に決めて書いてあるものと、聞かれてから説明するものは、同じ内容でも受け取られ方が違います。先に決めて残しておいてください。
「なぜそうしたか」を説明できるようにしておく
第1回で権限の線引き、第2回で出力の確かめ方を扱いました。今回はその先、外から問われたときに答えられるかという話です。 AIを業務に使っていると、いずれ必ず聞かれます。顧客から、取引先から、監督する立場の人から、あるいは社内の別部署から。「これはどうやって作ったのか」「AIが決めたのか」「間違っていたら誰の責任か」。 このとき困るのは、答えが無いからではありません。答えはあるのに、後から作ったように聞こえてしまうからです。事前に決めて書いてあるものと、聞かれてから説明するものは、同じ内容でも受け取られ方がまったく違います。 後手に回る答え方
- 「最終的には人間が確認していますので大丈夫です」。何をどう確認したかが無いので、確認の実質が伝わらない。
- 「AIは補助的に使っているだけです」。程度の話にすると、相手の不安の大きさ次第で押し切られる。
- 「そのあたりは事故が起きたら考えます」。起きてから考えた形跡は、必ず後から検証されます。 先に決めてある答え方
- 「この作業ではAIをここまで使い、ここからは使わない、と決めています」と、決めた範囲を示す。
- 「毎回この一点を確認していて、記録はこの形で残しています」と、確認の実質を示す。
- 「判断の責任は私(当社)にあります」と、責任の所在を先に言う。相手が本当に聞きたいのはここです。 作っておく一枚
- ① 使っているAIの名前と、入力が学習に使われない契約かどうか
- ② 何に使い、何には使わないか(作業名で具体的に)
- ③ 毎回確認している一点と、記録の残し方
- ④ 最終的な判断と責任の所在
この一枚は守りの文書に見えますが、実際には営業資料としてよく効きます。ここまで整理して示せる相手はまだ少なく、それ自体が仕事の丁寧さの証明になるからです。
「AIが決めた」という言い方をしない
言葉づかいの話に見えますが、実務では効き方が大きく違います。 「AIが判断しました」と言った瞬間、責任の所在が曖昧になります。相手は、間違っていたときに誰に言えばいいのか分からなくなり、不信が生まれます。そして実際のところ、AIは判断していません。人が判断した結果を、AIが用意した材料で補強しただけです。 正確に言うなら、こうなります。「私が判断しました。その過程でAIに下調べをさせました」。長くなりますが、この順序で言えるかどうかが、信用の分かれ目になります。
| 避けたい言い方 | 正確な言い方 | 違い |
|---|---|---|
| AIが計算しました | 私が確認した計算です。集計はAIに行わせました | 確認したのが誰かがはっきりする |
| AIの判断では〜 | 私の判断です。判断材料の整理にAIを使いました | 判断の主体が動かない |
| AIが見落としたようです | 私の確認が漏れました | 責任を道具に転嫁しない |
| AIを導入したので効率化されました | この作業を自動化し、確認をここに絞りました | 何がどう変わったかが伝わる |
| 言い換えの例 |
3行目がいちばん大事です。間違いが起きたときに道具のせいにした瞬間、それまでの信用がまとめて失われます。逆に、自分の確認漏れとして引き受けられる人は、AIを使っていることをむしろ安心材料として受け取ってもらえます。
参考・出典
- MCP「The 2026-07-28 Specification」: https://blog.modelcontextprotocol.io/posts/2026-07-28/
- MCP「Key Changes(2026-07-28 changelog)」: https://modelcontextprotocol.io/specification/2026-07-28/changelog
- MCP「Release Candidate の解説」: https://blog.modelcontextprotocol.io/posts/2026-07-28-release-candidate/
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン 第1.2版」(2026年3月31日): https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/pdf/20260331_1.pdf
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関連: 第2回|AIの出力を、どこで止めるか で詳しく解説しています。
- 取引先から問われる三つの場面 — AIを使っていることを隠す必要はありません。
- 社内で決めておく責任の線 — 外に説明する前に、社内で決まっていないと答えられません。
- 今月の動き(2026年7月時点)
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