AIはエンジニアの仕事を奪わない―最新データで読むフィリピン日系企業のIT人材戦略

AIはエンジニアの仕事を奪うどころか需要を拡大させています。フィリピン進出を検討する日本企業や在比日系企業に向けて、最新の採用データと現地の規制を踏まえたIT人材戦略・AI導入の進め方を実務目線で解説します。

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運営者・AIエンジニア / IT歴36年以上・マニラ在住13年以上

AIはエンジニアの仕事を奪わない―最新データで読むフィリピン日系企業のIT人材戦略

AIはエンジニアの仕事を奪わなかった ― 最新データが示す「需要拡大」と、フィリピン日系企業のIT人材戦略

「AIで開発人員を減らせる」は本当でしょうか。最新の採用データをもとに、フィリピン日系企業がエンジニアの生産性を高め、需要拡大に備えるための実務ポイントを解説します。


Part 1: このテーマが重要な理由

Step 1: フィリピンビジネスでの背景 (3分)

「AIがエンジニアの仕事を奪う」という話は、ここ数年ずっと議論の的になってきました。ところが2026年6月に出た新しいデータは、現実が予想とは逆方向に進んでいる可能性を示しています。ベンチャー投資会社が大量の採用データを分析したところ、エンジニア職はむしろ最も需要が底堅い職種だった、という結果が出たのです。

これはフィリピンで事業を営む日系企業にとって、とても身近な問題です。フィリピンは英語が通じるIT人材の宝庫であり、多くの日本企業がここにソフトウェア開発や保守の拠点を置いています。もし「AIがあるからエンジニアは減らせる」という前提で採用計画を縮めてしまうと、需要が伸びている局面で人材を取りこぼし、競合に後れを取る恐れがあります。

逆に言えば、AIを使いこなすエンジニアの価値はこれから上がっていきます。フィリピンの若いIT人材にAIツールの使い方を覚えてもらい、生産性を高める方向に投資すれば、限られた予算でより多くの開発ができるようになります。採用を「減らす理由」としてではなく、「強化する好機」としてAIをとらえ直すことが、いま求められています。

月曜の朝、マニラのオフィス。あなたは日本本社から届いた「AI導入で開発人員の見直しを検討せよ」というメールを開いたところです。隣の席のフィリピン人エンジニアリングマネージャーに画面を見せながら、こう切り出します。「このニュース記事を見てください。最新のデータでは、AIを入れた会社ほどエンジニアを多く採っているそうです。本社にどう説明すれば、今いる優秀なメンバーを守れるか、一緒に考えてもらえますか」

Step 2: 元記事の要点を整理する (5分)

元記事が伝えている事実を、数値と固有名詞を中心に整理しました。

項目内容
全体の採用減大手テック企業の採用数は2019年比で25%減少した
エンジニア職の採用減エンジニア職の減少は11%にとどまり、最も底堅かった
新規採用に占める割合主要12社で2025年の新規採用の55%がエンジニアだった(2019年は46%)
スタートアップの動きアーリーステージの新興企業はエンジニアを2019年比で7%多く採用した
分析の規模8,000万社超にわたる数百万人の経歴を追跡した調査による
慎重な見方Anthropicの経済責任者は、雇用への大きなAIの影響はまだ見られないと3月に語った
楽観的な見方NvidiaのCEOは、AIでエンジニアは「これまで以上に多忙だ」と述べた

TechCrunch — 「AI was supposed to kill engineering jobs, but new data suggests they're the most resilient」(2026年6月24日)

この表は学習目的で公開情報の事実をもとに作成したものです。詳細は上記リンクの元記事をご確認ください。

関連: フィリピンでAIを導入したい日本人経営者が知るべき実践ガイド で詳しく解説しています。

Step 3: 理解度チェック (5分)

Q1. 大手テック企業全体の採用数は2019年と比べて何%減りましたか。また、エンジニア職の減少幅はそれより大きかったでしょうか、小さかったでしょうか。 ヒント: 全体は25%減でした。エンジニア職の数字は11%です。

Q2. 主要12社で、2025年の新規採用に占めるエンジニアの割合は何%でしたか。 ヒント: 2019年の46%から、いくらか上がっています。

Q3. アーリーステージのスタートアップは、2019年と比べて2025年にエンジニアを何%多く採用しましたか。 ヒント: ひと桁台の増加です。

Q4. Anthropicの経済責任者は、AIが雇用に与える影響について3月の時点でどう述べましたか。 ヒント: 「大きな影響はまだ見られない」という趣旨の発言でした。

Q5. 記事が引用する「ジェヴォンズのパラドックス」とは、どういう考え方ですか。 ヒント: 効率が上がると、その資源への需要は減るのか増えるのか、を考えてみましょう。


関連: フィリピン日系企業のAI導入を成功させるハーネスエンジニアリング入門 で詳しく解説しています。

Part 2: 実務への応用

Step 4: フィリピンでの導入ステップ (10分)

このテーマを「AIでエンジニアを減らす」ではなく「AIでエンジニアの生産性を上げ、需要の伸びに備える」という方向で実務に落とし込む手順を整理しました。

ステップ内容フィリピン特有の注意点
1. 現状把握自社のエンジニアが今どんな作業に時間を使っているかを書き出す口頭での合意が多い職場文化のため、作業内容は必ず文書に残しましょう
2. ツール選定AIコーディング支援ツールを少人数で試す1人あたり月₱600〜1,200ほどの利用料を見込み、小さく始めましょう
3. データの扱いを確認顧客情報を学習に使われない設定にする個人情報を扱う場合はデータ・プライバシー法(NPCが所管)の順守が必要です
4. 教育と権限エンジニアにツールの使い方を教え、評価に反映する雇用条件の変更はDOLEの労働規則に沿って慎重に進めましょう
5. 成果の測定開発スピードや品質の変化を3か月ごとに見直す数字の改善は本社報告にも使えるよう、月次で記録しましょう

最初のステップでは、誰が何にどれだけ時間を使っているかを正直に書き出すことが大切です。フィリピンの現場では「だいたいこうしている」という暗黙の了解で回っている作業が多く、そこを文書にするだけで改善点が見えてきます。

ツール選定では、いきなり全社展開をせず、意欲のあるエンジニア2〜3人で試すのがおすすめです。利用料はドル建ての海外サービスが多いため、為替の変動も見込んで予算を組みましょう。

Step 5: よくある失敗と対策 (5分)

失敗パターン1: 「AIがあるから人を減らせる」と早合点する

AIツールを入れた瞬間に「これでエンジニアは半分でいい」と判断してしまうと、需要が伸びる局面で人材を失います。元記事のデータは、むしろAIを使う会社ほどエンジニアを多く採っている現実を示しています。

NG例: 開発支援ツールを導入した直後に、本社へ「来期は採用枠を半減できます」と報告してしまいます。

OK例: まずは3か月、生産性がどれだけ上がるかを測ります。その結果を見てから、増えた余力をどの新規開発に振り向けるかを本社と相談します。

失敗パターン2: ツールにデータを渡したまま放置する

便利だからと顧客情報をそのままAIツールに入力すると、情報漏洩などの事故につながりかねません。フィリピンではデータ・プライバシー法があり、違反すると罰則の対象になります。

NG例: 顧客の氏名や連絡先を含むデータを、設定を確認しないままAIツールに貼り付けて使い続けます。

OK例: 入力したデータが学習に使われない設定かどうかを先に確認します。個人情報は匿名化してから渡すルールを、チームで決めて文書に残します。

失敗パターン3: 現地スタッフへの説明を省く

AI導入を日本本社の都合だけで進め、現地エンジニアに目的を伝えないと、「自分たちの仕事を奪う道具だ」と受け取られ、反発を招きます。

NG例: 全員参加の朝礼で「明日からこのツールを使うように」とだけ伝え、理由を説明しません。

OK例: なぜ導入するのか、雇用にどう影響するのかを丁寧に説明する場を設けます。「生産性を上げて、もっと面白い開発に挑むため」という目的を共有し、質問を受ける時間を必ず取ります。


Part 3: さらに深く学ぶ

Step 6: 関連する技術用語 (5分)

ジェヴォンズのパラドックス(Jevons paradox/効率向上が需要を増やす逆説)は、ある資源を使う効率が上がると、その資源の使用量はかえって増えるという考え方です。たとえば燃費の良い車が増えると、人々はより長い距離を運転するようになります。フィリピンの開発拠点でも、AIでコードを書く速度が上がると、その分だけ新しい開発案件を引き受けられるようになり、結果としてエンジニアの仕事はむしろ増えていきます。

エージェント型AI(agentic AI/自分で手順を考えて作業を進めるAI)は、人が一つひとつ指示しなくても、目標に向かって自分で判断しながら作業を進めるAIのことです。料理人に「カレーを作って」と頼めば材料の準備から味付けまで自分でこなす、そんなイメージです。マニラの開発チームがエージェント型AIを使えば、定型的なコード作成を任せられ、エンジニアはより難しい設計に集中できます。

AIコーディングツール(AI-powered coding tools/AIによるプログラミング支援道具)は、プログラムを書く作業をAIが手伝ってくれるソフトのことです。書きかけのコードの続きを提案したり、間違いを見つけたりしてくれます。フィリピンのIT企業がこうしたツールを新人エンジニアに使わせると、先輩の手を借りずに学べる範囲が広がり、戦力になるまでの時間を短くできます。

エントリーレベルのホワイトカラー職(entry-level white-collar jobs/新人の事務系・専門職)は、経験の浅い人が就く事務系や専門系の仕事を指します。新卒で入った若手が任される最初の仕事、と考えると分かりやすいです。フィリピンの日系企業では、こうした入口の仕事をAIが肩代わりするのか、それとも若手がAIを使ってより早く成長するのか、採用の方針を考えるうえで重要な論点になります。

人員数(headcount/組織で働く人の数)は、ある部門や会社で働いている人の数のことです。チームに何人いるか、という単純な数字です。フィリピン拠点の予算を本社に申請するとき、エンジニアの人員数をどう増減させるかは最も注目される項目であり、AI導入の効果を説明する材料としても使われます。

Step 7: 自社への応用を考える (10分)

自社のエンジニア業務を「AIに任せる部分」と「人が伸ばす部分」に分ける

考えるヒント: 今の開発業務を、定型的でAIに任せやすい作業と、人の発想が必要な作業に分けてみましょう。前者をAIに渡せば、後者に人手を集められます。

AI時代に現地エンジニアの価値をどう高めるか

考えるヒント: 採用を減らす発想ではなく、今いるメンバーがAIを使いこなせるよう育てる発想で考えてみましょう。教育に少し投資するだけで、一人あたりの生産量が変わります。

本社への説明をデータで裏づける

考えるヒント: 「AIで人を減らせる」という本社の期待に対し、生産性の数字を示しながら「むしろ強化すべき」という説明をどう組み立てるかを考えてみましょう。

次のアクション: まずはエンジニア2〜3人を選び、AIコーディング支援ツールを1か月試してもらいましょう。導入前と後で、ひとつの機能を完成させるまでの時間を記録すれば、効果を数字で示す最初の材料になります。


Part 4: FAQ

Q1. フィリピン拠点でAIコーディングツールを入れると、本当にエンジニアを減らせますか。

元記事のデータを見るかぎり、AIを使う会社ほどエンジニアを多く採っているのが実情です。短期的に人を減らすより、今いるメンバーの生産性を上げて、増えた余力を新しい開発に回すほうが現実的です。減らす判断は、数か月の効果測定を見てからにしましょう。

Q2. AIツールに顧客データを入れても法律上問題ありませんか。

フィリピンにはデータ・プライバシー法があり、個人情報の扱いはNPC(国家プライバシー委員会)が監督しています。顧客の氏名や連絡先をそのまま入力するのは避け、学習に使われない設定にしたうえで、可能なら匿名化してから使いましょう。違反には罰則があるため、導入前に必ず社内ルールを決めてください。

Q3. AI導入を理由に現地スタッフの雇用条件を変えてもよいですか。

雇用条件の変更はDOLE(労働雇用省)の規則に沿う必要があり、慎重な手続きが求められます。フィリピンでは口頭での約束も重く受け止められる文化があるため、変更内容は必ず文書にし、本人の同意を得たうえで進めましょう。一方的な不利益変更はトラブルのもとになります。

Q4. 日本本社が「AIで人員削減」を求めてきます。どう対応すべきですか。

感情ではなく数字で対話するのが有効です。導入前後で開発スピードがどう変わったかを記録し、「削減」ではなく「同じ人数でより多くの開発ができる」という形で価値を示しましょう。元記事のような第三者データを添えると、説得材料になります。

Q5. 新人エンジニアの採用は控えたほうがよいですか。

むしろ逆です。AIツールを使えば、新人が先輩の手を借りずに学べる範囲が広がり、戦力になるまでの時間を短くできます。AIを前提に育成の仕組みを整えれば、若手の採用は将来への投資として活きてきます。フィリピンは若いIT人材が豊富なので、この強みを活かしましょう。


活用のコツ(3 Tips)

まず3か月、生産性を数字で記録する

AI導入の効果は感覚ではなく数字で語ると説得力が増します。ひとつの機能を完成させるまでの時間を導入前後で記録すれば、本社への報告にも、現地チームの納得にも使えます。最初の一歩はこの記録から始めましょう。

データの扱いルールを先に決めてから導入する

便利さを優先してデータの扱いを後回しにすると、情報漏洩などの事故につながります。何を入力してよく、何を匿名化するかを、導入前にチームで決めて文書に残しておきましょう。これがフィリピンでの法令順守の土台になります。

現地エンジニアに「目的」を共有してから始める

AIは仕事を奪う道具ではなく、より面白い開発に挑むための道具だと伝えることが大切です。導入の目的を説明し、質問を受ける場を設けてから始めれば、反発ではなく協力を引き出せます。


ボーナス: PH AI Worksの活用法

PH AI Worksは、フィリピンに進出する日本企業や在比日本人ビジネスパーソンに向けて、AIとテクノロジーの実務活用を支援しています。今回のテーマである「AIを使ったエンジニアの生産性向上」や「現地IT人材の育成」についても、現地の事情を踏まえてご相談いただけます。

次のステップとして、たとえば以下のような内容をご相談いただけます。

  • AIコーディング支援ツールの選定と、少人数での試験導入の進め方
  • フィリピンのデータ・プライバシー法を踏まえた、AIツール利用時のデータ取り扱いルールづくり
  • 現地エンジニアへのAI教育プログラムの設計と、生産性を本社に説明するための数値づくり

まずはお気軽にお問い合わせください。無料でご相談いただけます。


参考・出典

この記事を書いた人

執筆者
執筆者

運営者 / AIエンジニア(IT歴36年以上)

  • 東京都出身・マニラ在住13年以上
  • IT歴36年以上(開発・SEO・AI)
  • IBM認定 生成AIエンジニア
  • AIチャットボット・RAG・AIエージェント開発

IT歴36年以上、マニラでの実務経験13年以上の日本人AIエンジニア(運営者)です。AIチャットボットや業務自動化、AIエージェント、生成AIマーケティングなど、フィリピンの日系企業が「成果に直結するAI」を導入できるよう、現場目線で記事を書いています。ご相談は日本語・英語どちらでも対応します。

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