企業のAI導入の成否は最初の1業務で決まる|業務選びの3つの条件

企業のAI導入がうまくいくかは、最初にどの業務を選ぶかで決まります。毎日か毎週繰り返している、答えが決まっている、間違いに人が気づいて直せる、という3つの条件で選びましょう。マカティの携帯ショップとマニラの美容院を支援した実例、私の失敗と解決法まで説明します。

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運営者・AIエンジニア / IT歴36年以上・マニラ在住13年以上

企業のAI導入の成否は最初の1業務で決まる|業務選びの3つの条件

「AI導入 企業」で検索すると、大手企業の事例が並びます。しかし、読んでも自社で何から始めていいかわかりません。会社の規模も、抱えている業務も違うからです。

私はフィリピンで日系企業や個人経営の会社のAI導入を支援しています。うまく進む会社とそうでない会社の差は、AIの種類でも予算でもありません。最初にどの業務を選んだかで、ほぼ決まります。

この記事では、最初の1業務を選ぶ3つの条件と、実際の支援先でどう実践したかを説明します。私自身の失敗した例や解決策なども紹介します。

要約

  • 企業のAI導入の成否は、最初に選ぶ1業務で決まります。他社の事例を読んでも、自社のどの業務にあてはめればいいかは書かれていません
  • 選ぶ条件は3つです。毎日か毎週繰り返している、答えが決まっている、間違いに人が気づいて直せる、の3つを満たす業務から始めます
  • 3つ目を外すと、間違いが表に出るまで気づけません。私はAI導入の初期にこれで失敗しました

他社の事例をいくら読んでも、自社の何から始めるかは決まらない

事例に書いてあること自社で決めなければいけないこと
どんなAIを入れたか自社のどの業務に入れるか
どれだけ時間が減ったか自社のどの作業が減るか
いくらかかったか自社の場合いくらまで出すか

AI導入の事例には、何を導入して何が変わったかが書かれています。しかし、その会社がなぜその業務を選んだのかは、たいてい書かれていません。読んだ側は「うちも何かできそうだ」と思うだけで、次の一歩が決まりません。

決まらないまま話を進めると、「とりあえず、全社でAIを活用する」という方針になりがちです。この決め方だと、担当も範囲も決まらないので、たいていうまくいきません。誰の業務が減るのかがはっきりしないまま、AIツールの比較と検討だけが続きます。

私のところにAI導入の相談に来る会社の多くは、いまどの作業に何時間かかっているかを数字で言えません。この状態で先に進むと、話がまとまりません。まず必要なのは、AIツールを選ぶことではなく、業務を選ぶことです。

最初の1業務は、会社の規模ではなく3つの条件で選ぶ

条件見分け方
繰り返している毎日か毎週、同じ手順でやっている
答えが決まっている判断より作業の割合が大きい
人が気づいて直せる出てきたものを、出す前に人が確認できる

最初の1業務は、次の3つを満たすものから選びましょう。

1つ目は、毎日か毎週、同じ手順で繰り返している業務です。月に1回の作業をAIに任せても、効果が出るまでに何か月もかかります。回数が多いほど、早く差が出ます。

2つ目は、答えが決まっている業務です。問い合わせへの定型の返信や、決まった形式への転記がこれにあたります。その場の判断が多い業務は、AIを導入するより人の手順を整えるほうが早いです。

3つ目は、間違いに人が気づいて直せる業務です。AIの出したものを、誰かが確認できるかどうかを見ます。この条件は軽く見られがちですが、外すと後で高くつきます。

3つの条件を、支援先の会社でどう当てはめたか

会社選んだ業務かかった期間と結果
マカティの携帯ショップMessengerに届く定型の問い合わせへの返信2〜4週間、費用約3万ペソ
マニラの美容院予約と問い合わせの対応約1.5か月、対応の人件費がほぼゼロ
私の会社会議の議事録づくり2〜3時間かかっていた作業が1時間程度に

マカティのフィリピン人が経営する小さな携帯ショップでは、Messengerに毎日届く問い合わせをAIに置き換える最初の業務に選びました。営業時間、在庫、修理の料金といった、答えが決まっている質問です。タガログ語、英語、日本語で自動返信できるようにして、導入期間は2〜4週間、費用は約3万ペソでした。3つの条件をすべて満たしているので、小さく始めても効果がはっきり出ます。

マニラの美容院は、日本で20年美容師をしてきた40代の男性が経営しています。ここでAIに置き換える最初の業務に選んだのは、予約と問い合わせの対応です。この業務を任せたことで、対応にかけていた人件費がほぼゼロになりました。施術そのものは人にしかできませんが、その前後のやりとりはAIで自動化できます。

私自身の組織では、会議の議事録づくりから始めました。手作業のときは2〜3時間かかっていた作業が、1時間程度で終わるようになりました。毎週やっていて、書き方も決まっていて、配る前に自分で読み返せます。これも3つの条件が揃っている業務です。

3つ目の条件を外すと、間違いが表に出るまで気づけない

私はAI導入の初期に、この3つ目を外して失敗しました。AIが出した数値と、実際の取引データが食い違ったまま、クライアントへの報告に使ってしまったのです。人が確認する手順を入れていなかったので、指摘されるまで気づけませんでした。

原因は、AIの精度ではありません。どのデータをどこから取ってきたのかがはっきりしていなかったことです。データの出どころを決めて、別の情報源と突き合わせる手順を入れてから、この問題は起きなくなりました。

この経験から、支援先には必ず確認の担当と手順を決めてもらっています。AIに任せる範囲を広げるのは、そのあとです。

最初の1業務を決めたあとの進め方

段階やること目安の期間
開始7割の出来で使い始める最初の2週間から1か月
調整実際に使ったデータを見て直す1か月から3か月
拡張次の業務に広げるかを決める3か月から6か月

最初から完成を目指すと、いつまでも始まりません。7割の出来で使い始めて、出てきたものを見ながら直すほうが、結果的に早く仕上がります。業務にもよりますが、全体では3か月から6か月を見ておくと、無理がありません。

進め方でもう1つ大事なのは、いまの業務の流れを変えすぎないことです。長く働いてきた人ほど、AIで変わった業務のやり方に慣れる時間が必要です。従来の手順は残したまま、その中の1工程だけをAIに置き換えましょう。

企業のAI導入でよくある失敗例

失敗例どうするか
全社で一度に始める1業務に絞って始める
月1回の業務を選ぶ毎日か毎週の業務を選ぶ
出てきたものを誰も確認しない確認の担当と手順を先に決める
今の作業時間を測らずに始める始める前に時間を記録する

失敗例:全社でAIを活用すると決めて、一度に始めます。担当も範囲も決まらないので、ツールの検討や比較で止まります。1つの業務に絞れば、担当者も効果も決まります。

失敗例:月に1回しかない業務を選びます。回数が少ないと、効果が出たかどうかを判断できるまでに何か月もかかります。毎日か毎週やっている業務のほうが、効果が早く見えます。

失敗例:AIが出したものを、誰も確認しないまま外に出します。私はこれで数値の食い違いを見逃しました。確認する人と手順を、始める前に決めてください。

失敗例:今の作業時間を測らないまま進めてしまいます。元の時間が分からないと、減ったかどうかを説明できません。1週間でよいので、始める前に記録しておきましょう。

よくある質問

Q: 社内にITに詳しい人がいません。それでもAI導入を始められますか。

A: 始められます。自社の業務をよく知っていれば、ITに詳しくなくても、最初の1業務を選べます。毎日その作業をしている人が選ぶほうが、条件に合う業務が見つかります。技術の部分はAIの専門家に依頼しましょう。

Q: 費用はどのくらいかかりますか。

A: 選ぶ業務によって変わります。私が支援した例では、定型の問い合わせへの自動返信だけなら約3万ペソでした。範囲が決まっていないと、見積もりは出せません。まず1業務に絞ってから、費用の話に進んでください。

Q: どのくらいで効果が出ますか。

A: 毎日繰り返している業務なら、2週間から1か月で差が見え始めます。ただし、そのまま安定して回るようになるまでは3か月から6か月かかります。最初の数字だけで判断せず、3か月は続けてください。

まとめ

企業のAI導入は、最初にどの業務を選ぶかで決まります。他社の事例を読んでも自社の業務にはあてはまらないので、自分で選ぶしかありません。

選ぶ条件は3つです。毎日か毎週繰り返していること、答えが決まっていること、間違いに人が気づいて直せることです。3つ目を外すと、私のように間違いが表に出るまで気づけません。

まず、自社で毎日か毎週繰り返している作業を書き出して、いまかかっている時間を1週間だけ記録してください。それが最初の1業務を選ぶ材料になります。どの業務から始めるか迷う場合は、無料相談をご利用ください。

参考・出典

この記事を書いた人

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運営者 / AIエンジニア(IT歴36年以上)

  • 東京都出身・マニラ在住13年以上
  • IT歴36年以上(開発・SEO・AI)
  • IBM認定 生成AIエンジニア
  • AIチャットボット・RAG・AIエージェント開発

IT歴36年以上、マニラでの実務経験13年以上の日本人AIエンジニア(運営者)です。AIチャットボットや業務自動化、AIエージェント、生成AIマーケティングなど、フィリピンの日系企業が「成果に直結するAI」を導入できるよう、現場目線で記事を書いています。ご相談は日本語・英語どちらでも対応します。

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