フィリピンでAIを仕事に使うには?中小企業・日系企業が最初に始める3つのこと

フィリピンで事業をする中小企業・日系企業向けに、Messengerの問い合わせ対応やメール・資料づくりにAIを取り入れる手順を解説。何から始めるか、個人データの注意点、開発・外注・SEO・起業の関連記事までまとめた入門ガイドです。

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運営者・AIエンジニア / IT歴36年以上・マニラ在住13年以上

フィリピンでAIを仕事に使うには?中小企業・日系企業が最初に始める3つのこと

要約

  • フィリピンの顧客はFacebookやMessengerにいるため、最初のAI活用は問い合わせへの自動応答から始めるのが近道です。
  • メールや資料づくりには ChatGPT(会話の形で文章を作ったり質問に答えたりするAI)や Gemini(Google のAI)が使えますが、会社の情報が学習に使われない設定やプランを選ぶことが前提です。
  • 個人データを扱うAIにはフィリピンのデータプライバシー法が当てはまるため、AIに渡してよい情報を先に決めてから利用します。

フィリピンでAIを使う前に知っておきたい「顧客のいる場所」

フィリピンでAIを仕事に取り入れるなら、まず顧客がどこで連絡してくるかを押さえましょう。ここがわかると、AIをどの仕事に使えば効果が出るかがわかります。

2025年1月の時点で、フィリピンのインターネット利用者は9,750万人で、人口の83.8%です。SNSのアカウント数は9,080万で、人口の78.0%にあたります。Facebook広告が届く人数も9,080万人です。携帯電話の回線数は1億4,200万で、人口の122%になります。

この数字が示すとおり、フィリピンの顧客との連絡の中心は、メールや電話ではなくFacebookとMessengerです。Messengerは、Facebookについているメッセージ機能のことです。TikTokの利用者(18歳以上)は6,230万人、YouTubeの利用者は5,770万人で、動画で情報を探す人も多くいます。

私は2013年からマニラに暮らし、この国で仕事をしています。日本と同じ感覚で「問い合わせはメールで来る」と考えていると、顧客の声を取りこぼします。

AIとは何か、中小企業の仕事のどこに使えるか

AI(人工知能)は、文章を書く、質問に答える、内容をまとめるといった作業の一部をコンピューターが代わりに行う仕組みです。なかでも「生成AI」は、指示に応じて文章や画像を新しく作るAIで、ChatGPT や Gemini がその代表です。プロンプトとは、AIへの指示文のことです。

フィリピンで事業をする中小企業・日系企業が、毎日の仕事でAIを使いやすい場面は、次の2つです。

  1. 顧客との連絡(Messenger・Instagram・WhatsAppへの返信)
  2. 社内の文書づくり(メールの下書き、英語の文書、会議のメモ、資料)

どちらも「毎日くり返す」「型がある」仕事なので、AIに向いています。反対に、スタッフの家庭の事情や宗教への配慮が関わる判断は、AIに向きません。私自身、データの整理や下書きはAIに任せていますが、こうした判断は必ず人が行っています。

始め方1:Messengerなどの問い合わせに自動で返信する

最初の一歩としておすすめするのが、Meta Business Suite の自動応答です。Meta Business Suite は、Facebookページ・Instagram・WhatsApp のメッセージや投稿を1か所で管理できる、Meta社の無料ツールです。自動応答(Inbox automations)とは、届いたメッセージに、あらかじめ決めた文で自動的に返信する機能のことです。

顧客の多くがMessengerを利用しているフィリピンでは、この機能を整えるだけで返信の遅れによる問題を減らせます。

関連: フィリピンのオフショア開発で失敗しない発注ガイド|契約・著作権・個人データ・祝日の注意点 で詳しく解説しています。

使うための準備

Facebookページ、Instagramのビジネスアカウント、WhatsApp Business アカウントを Meta Business Suite につなぐと使えます。Messenger・Instagram・WhatsApp に届いたメッセージや、投稿へのコメントに自動で返信できます。

設定の手順(パソコン版)

  1. Meta Business Suite を開き、「Inbox(受信箱)」を選ぶ
  2. 「Automations」を開く
  3. 右上の「Create automation」を押す
  4. 使いたい自動応答の型を選ぶ
  5. 画面の指示に従って文を入れる

用意されている自動応答の型

型の名前できること
Auto reply最初のメッセージにあいさつを返す
Away message対応できない時間に返す
Frequently asked questionsよくある質問を選んでもらい、答える
Location場所を聞かれたら答える
Contact information連絡先を伝える
Hours営業時間を伝える
Custom keywords特定の語を含むメッセージに答える
Comment to message特定の語を含むコメントに、メッセージで返す
Identify unanswered messages返事をしていない会話を見つける
Assign admins新しい会話を担当者に振り分ける

まずは「Away message」「Frequently asked questions」「Hours」の3つから始めましょう。営業時間外の問い合わせと、毎回同じ質問への返事がこれで片づきます。

関連: フィリピンでのIT開発の進め方|在比日系企業が失敗しない選び方 で詳しく解説しています。

Custom keywords を使うときの注意

特定のキーワードに反応して答える「Custom keywords」は便利ですが、決まりがいくつかあります。

  • 1つの自動応答に設定できる語や言い回しは、最大5つまで
  • 大文字と小文字を区別し、完全に一致しないと送られない
  • 同じ語は1つの自動応答にしか使えない
  • 写真・動画・ボタン・リンクを入れられる
  • 担当者が15分以内に返事をしなければ、自動で送られる
  • Custom keywords と Comment to message は、パソコン版でだけ設定できる

フィリピンの顧客は、英語とタガログ語を混ぜた「タグリッシュ」で書いてくることがよくあります。完全一致でしか反応しないため、英語とタガログ語のキーワードの両方を、それぞれ登録しておくのが重要です。

また、Away message のような型の自動応答と Custom keywords の両方に当てはまったときは、型の自動応答のほうが送られます。さらに「Meta Business Agent」をオンにすると、Away message や Auto reply など今ある自動応答は止まります。設定を変えたら、自分で一度メッセージを送って確かめてください。

なお Meta のヘルプには、ヨーロッパや日本との間のやりとりでは、一部のメッセージ機能や数字の集計が使えないと書かれています。日本の本社や日本の顧客とのやりとりにも使う場合は、この点を確かめてから設定しましょう。

関連: フィリピン外注の常識が変わる|AI再教育1万人発表と日系企業の対応 で詳しく解説しています。

私が問い合わせ対応で学んだこと

2000年代、日本でSEO(Googleなどの検索で自社のページを上のほうに表示するための技術)の事業をしていたころ、顧客への返信やよくある質問の案内は、すべて手作業でした。いちばん多い質問は毎回ほぼ同じで、同じ答えを何度も手で打っていました。問い合わせの大半は決まった質問のくり返しです。だからこそ、最初に自動化する価値があるのです。

始め方2:メール・英語の文書・資料づくりにAIを使う

2つ目は、社内の文書づくりです。フィリピンでは、取引先やスタッフとのやりとりの多くが英語になります。英語のメールの下書き、日本語の資料の英訳、会議のメモ取りは、AIがもっとも力を発揮する仕事です。

私も ChatGPT Plus と Claude Pro を使い分け、AIで下書きを作ってから、自分の経験で手直ししています。日本語のあいまいな言い回しを、はっきりした英語に置きかえる判断がいちばん難しいところです。フィリピンでは「察してもらう」ことを期待した書き方は誤解を生みます。AIに英文を書かせるときも、何を・いつまでに・誰がするかを日本語の段階ではっきり書いてから頼むと、伝わる英文になります。

ChatGPT を使う場合

ChatGPT は、OpenAI が提供する、会話の形で文章を作ったり質問に答えたりするAIです。注意したいのは「学習」です。学習とは、AIの会社が利用者の入力を使ってAIを賢くすることで、会社の秘密が外部に漏えいするおそれがあります。

  • ChatGPT Business・ChatGPT Enterprise・ChatGPT Edu・API(ほかのソフトからAIの機能を呼び出して使うための窓口)に入力した内容は、初期設定では学習に使われません
  • 個人向けの ChatGPT では、入力した内容が学習に使われることがあります。止めるには、Settings → Data controls で「Improve the model for everyone」をオフにします
  • 学習を止めていても、回答に「いいね・よくないね」を押すと、その会話全体が学習に使われることがあります
  • 「Temporary chat(一時チャット)」のままなら、学習に使われず、履歴にも残りません

会社で使うなら、仕事用のプランを選ぶか、個人向けなら学習をオフにしてから使う、と社内で決めておきましょう。

Gemini を使う場合

Gemini は Google が提供するAIです。Google Workspace(Gmail・カレンダー・ドキュメント・スプレッドシートなどを会社で使うための Google の有料サービス)を使っている会社なら、すでにAIを始められます。

  • Business・Enterprise プランには、Gemini のAI機能が追加料金なしで入っています
  • Gmail・Docs・Sheets・Slides・Drive・Chat の横のパネルで Gemini を使えます
  • Gmail と Docs には文章の下書きを手伝う「Help me write」、Meet には会議のメモを取る「Take notes for me」があります
  • Google は、Workspace の内容を人が見たり、許可なく自社の外で生成AIの学習に使ったりしない、としています

ただし、いちばん安い Business Starter では、Gemini は Gmail でしか使えません。Docs・Sheets・Slides でも使うには Business Standard 以上が必要です(2026年10月の料金ページ)。資料づくりにも使いたいなら、プランを確かめてから始めましょう。

始め方3:AIに渡してよい情報を決める

3つ目は、AIを使用する際のルール作りです。AIを使い始める前に、「AIに入れてよい情報」と「入れてはいけない情報」を社内で決めましょう。

フィリピンの国家プライバシー委員会(NPC)は、2024年12月19日に出した Advisory No. 2024-04 で、個人データを扱うAIにもデータプライバシー法(Data Privacy Act of 2012)が当てはまると示しました。法律事務所の解説によると、AIで個人データを扱う会社には、次のことが求められます。

  • 何のために、どこまで個人データを扱うかを、本人にわかりやすく伝える
  • AIの結果に責任を持つ
  • プライバシー影響評価(個人データを扱う前に、どんな危険があるかを調べて対策を決めること)を行う
  • 人が判断に入る手順と、自動の判断に異議を言える仕組みを用意する

中小企業が日々の文書づくりで守るべきことは、シンプルです。顧客やスタッフの名前・住所・電話番号などをそのままAIに入れないことです。入れる必要がある仕事なら、学習に使われないプランを使い、人が最後に確かめる手順を決めておきましょう。

何から始めるか:小さく始めて直していく

国の動きにも少し触れておきます。フィリピン貿易産業省(DTI)は2024年7月3日に「National AI Strategy Roadmap 2.0(NAISR 2.0)」を発表し、AI活用が広がれば国内総生産(GDP)を年に最大2.6兆ペソ押し上げると見込んでいます。同時に、AI活用を妨げる課題として、使い道の例が少ないことを挙げています。

つまり、フィリピンでは「何に使えばいいかわからない」ことが、AI導入の一番の壁です。だからこそ、最初は使い道を1つに絞りましょう。

私が新しい仕組みを入れるときは、完成度70%で使い始め、実際に使ったデータを見ながら直していきます。長く働いてきた世代ほど、機能の多いツールの説明書で手が止まりがちです。慣れた仕事の流れはそのままにして、AIを少しずつ足していくほうが続きます。

おすすめの順番は次のとおりです。

  1. Messengerの自動応答(営業時間・よくある質問・時間外の返事)を設定する
  2. AIに渡してよい情報を社内で1枚の紙に決める
  3. 英語メールの下書きか会議のメモのどちらか1つにAIを使ってみる
  4. 1か月使って、うまくいった使い方だけを残す

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よくある質問

Q: ITに詳しいスタッフがいなくても、AIを使い始められますか?

使い始められます。Meta Business Suite の自動応答は、画面の指示に従って文を入れるだけで設定できます。Google Workspace の Business・Enterprise プランを使っているなら、Gmail や Docs の横のパネルからそのまま Gemini を使えます。最初は1つの仕事に絞れば、専門のスタッフは要りません。

Q: 無料や個人向けのAIに、会社の情報を入れても大丈夫ですか?

個人向けの ChatGPT では、入力した内容が学習に使われることがあります。会社の情報を入れるなら、学習をオフにするか、仕事用のプランを使います。顧客やスタッフの個人データは、フィリピンのデータプライバシー法の対象になるため、そのまま入れないと社内で決めておきましょう。

Q: タガログ語や英語での顧客とのやりとりにも使えますか?

使えます。ただし Messenger の Custom keywords は完全に一致した語にしか反応しないため、英語とタガログ語の語をそれぞれ登録しましょう。AIで作った英語の返事や文書は、最後に人が読んで確かめてから送ることを決まりにしてください。

まとめ

  • フィリピンの顧客はFacebookとMessengerを使用しています。最初のAI活用は、Meta Business Suite の自動応答で問い合わせへの返事を整えることです。
  • 英語メールや資料、会議のメモには ChatGPT や Gemini が使えます。学習に使われない設定やプランを選んでから使いましょう。
  • 個人データを扱うAIにはデータプライバシー法が当てはまります。AIに渡してよい情報を先に決め、人が最後に確かめる手順を残します。
  • 使い道は1つに絞り、小さく始めて直していくのが、フィリピンでAIを定着させる一番の近道です。

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参考・出典

この記事を書いた人

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運営者 / AIエンジニア(IT歴36年以上)

  • ●東京都出身・マニラ在住13年以上
  • ●IT歴36年以上(開発・SEO・AI)
  • ●IBM認定 生成AIエンジニア
  • ●AIチャットボット・RAG・AIエージェント開発

IT歴36年以上、マニラでの実務経験13年以上の日本人AIエンジニア(運営者)です。AIチャットボットや業務自動化、AIエージェント、生成AIマーケティングなど、フィリピンの日系企業が「成果に直結するAI」を導入できるよう、現場目線で記事を書いています。ご相談は日本語・英語どちらでも対応します。

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